コラム
2026年1月28日
犬の脾臓腫瘍の破裂について|実際の症例をまじえて紹介

犬がかかる腫瘍の中には、脾臓に発生する「脾臓腫瘍」という病気があります。
とくに高齢犬では比較的よくみられる腫瘍のひとつです。
「急に元気がなくなった」
「ふらついて立てない」
「お腹が張っている気がする」
このような症状が見られる場合、脾臓腫瘍の破裂が起きている可能性があります。
今回は、実際に当院で治療を行った脾臓腫瘍破裂の症例をもとに、病気の概要と治療の流れについてご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬に万が一のことが起きたときに備えてください。
犬の脾臓腫瘍とは?
良性腫瘍の場合もありますが、多くは悪性腫瘍であることが知られています。
とくに多くみられるのが「血管肉腫」と呼ばれる悪性腫瘍です。
血管肉腫は進行が早く、腫瘍が破裂して腹腔内出血を起こすことがあるため、命に関わる緊急疾患となります。
犬の脾臓腫瘍は高齢犬で発症しやすく、突然の体調不良をきっかけに発見されるケースも少なくありません。
犬の脾臓腫瘍の症状
犬の脾臓腫瘍の治療方法
脾臓腫瘍の基本的な治療は外科手術による脾臓摘出です。
とくに破裂して出血している場合は、緊急手術が必要となります。
出血量が多い場合には輸血を行い、循環状態を安定させたうえで手術を実施します。
摘出後の病理検査で脾臓腫瘍が悪性腫瘍と診断された場合には、手術後に抗がん剤治療を行うことで予後の延長が期待できることもあります。
また、脾臓腫瘍は破裂による重度の出血や腫瘍の影響によって「DIC(播種性血管内凝固)」と呼ばれる重篤な合併症を起こすことがあります。
DICとは、体の中で血が固まりやすくなったり出血しやすくなったりする異常な状態です。
全身状態が急激に悪化することのある重い合併症の一つです。
このような場合には集中治療と高度な麻酔管理が必要になるケースもあります。
実際の症例紹介
今回ご紹介するのは、10歳の去勢済みオスのパグの症例です。
ふらつきと力が入らない様子を主訴に来院されました。
診察時には全身状態が悪く、早急な検査が必要な状態でした。
当院で腹部レントゲン検査と腹部超音波検査を実施したところ、脾臓に腫瘍性病変が確認され、腫瘍の破裂による腹腔内出血が疑われました。
さらに検査の結果、DICを併発していることが判明しました。
次の画像が検査時の腹部レントゲン画像と超音波画像です。
治療と手術の経過
まず輸血を行い、全身状態の安定化を図ったうえで、緊急手術を実施しました。
本症例は非常に麻酔リスクの高い状態であったため、フェンタニル、レミフェンタニル、ケタミンなどの麻薬性鎮痛薬を用いた疼痛管理を行いました。
さらにドパミンやノルアドレナリンによる血圧管理を併用しながら慎重に麻酔管理を実施。
無事に脾臓摘出手術を終えることができ、術後は集中管理を継続しました。
以下が摘出した腫瘍の写真です。

術後3日ほどでDICの状態から脱することができ、食欲も改善したため退院となりました。
病理検査の結果、脾臓腫瘍は血管肉腫と診断されました。
飼い主様とご相談のうえ、術後の抗がん剤治療は行わず経過観察としましたが、約1か月間は転移も認められず、元気に過ごすことができました。
短い期間ではありましたが、ご自宅で穏やかな時間を過ごすことができ、飼い主様にもご満足いただける経過となりました。
まとめ
犬の脾臓腫瘍は、高齢犬でよくみられる悪性腫瘍のひとつです。
とくに血管肉腫は破裂による出血を起こしやすく、緊急対応が必要となることがあります。
今回の症例では、状態の悪い中でも輸血と高度な麻酔管理、緊急手術を行うことで、一時的ではありますが元気な時間を取り戻すことができました
また、手術後に抗がん剤治療を行うことで、さらに予後の延長が期待できるケースもあります。
当院では、腫瘍外科および高リスク症例の麻酔管理にも対応しております。
突然の体調不良や脾臓腫瘍と診断された場合には、早めにご相談ください。
愛知県名古屋市西区
庄内通どうぶつ病院



