コラム

2026年1月28日

猫の甲状腺癌について|実際の症例をまじえて紹介

台の上で寝そべる猫

猫がかかる内分泌疾患のひとつに、「甲状腺機能亢進症」があります。
高齢の猫でよくみられる病気で、

 

  • 体重減少
  • 食欲亢進
  • 活動性の増加

などの症状を示すことが知られています。
多くの場合は良性の甲状腺腫によるものですが、まれに悪性腫瘍である「甲状腺癌」が原因となっていることもあります。
「最近、体重が急に減ってきた」
「たくさん食べているのにやせてきた」
「落ち着きがなくなった気がする」
このような変化がみられる場合、甲状腺の病気が関係している可能性があります。

 

今回は、実際に当院で治療を行った猫の甲状腺癌の症例をもとに、病気の概要と治療の流れについてご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛猫の治療選択を考える参考にしていただければと思います。

 

猫の甲状腺機能亢進症と甲状腺癌とは?

猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
代謝が異常に活発になることで、

 

    • 体重減少
    • 食欲亢進
    • 多飲・多尿
    • 嘔吐・下痢
    • 落ち着きがなくなる

など、さまざまな症状を引き起こします。
初期の段階では「年のせいかな」と見過ごされてしまうこともあります。
しかし、進行すると心臓や腎臓に負担がかかり、全身状態の悪化につながることがある怖い病気です。
体重の変化は、病気の早期発見につながる大切なサインのひとつです。

 

甲状腺機能亢進症の原因の多くは良性の甲状腺腫とされていますが、一部には悪性腫瘍である甲状腺癌が含まれていることもあります。
甲状腺癌は周囲の組織へ浸潤したり、再発や転移を起こしたりすることがあるため注意が必要な病気です。
そのため、血液検査だけでなく、触診や超音波検査などを組み合わせて評価することが大切です。

 

 

猫の甲状腺機能亢進症の治療方法

猫の甲状腺機能亢進症の治療には、主に次のような選択肢があります。

 

    • 内服薬による内科治療
    • 食事療法
    • 外科手術
    • 放射性ヨウ素治療

内服薬や食事療法は管理しやすい方法ですが、生涯にわたる投薬や食事管理が必要となります。
また、甲状腺癌が疑われる場合には、内科治療だけでは十分な効果が得られないこともあります。
外科手術は、病変を直接取り除くことで根治を目指せる治療法です。
全身状態や年齢、腫瘍の性質などを総合的に判断し、最適な治療方法を選択することが重要です。

 

実際の症例紹介

今回ご紹介するのは、13歳の去勢済みオスの雑種猫の症例です。
1か月の間に体重が約1割減少して2.8kgから2.5kgまで低下したことを主訴に来院されました。
診察時には、首の部分にしこりがあることがわかり、体重減少の原因を詳しく調べることになりました。
当院で血液検査を実施したところ、甲状腺ホルモン(T4)の値が著しく高値を示していました。
さらに触診および超音波検査により、甲状腺の腫大と腫瘍性病変が疑われました。
こちらが実際の超音波検査画像です。

甲状腺癌エコー画像

これらの検査結果から、甲状腺機能亢進症に加えて甲状腺癌の可能性が高い状態と判断しました。

 

治療方針の決定と手術

治療の選択肢として、
・内服治療
・食事療法
・外科手術
について飼い主様と詳しくご相談しました。

 

その結果、年齢や今後の管理のしやすさ、そして甲状腺癌の可能性を考慮し、根治を目指す治療として外科手術を選択することになりました。
本症例では、甲状腺癌を強く疑っていたため、腫瘍だけでなく周囲の上皮組織の切除も必要となりました。
以下は実際の術中写真と摘出後の甲状腺の写真です。

甲状腺癌術中写真

摘出した甲状腺癌

手術は無事に終了し、術後は数日間の入院管理を行いました。

 

術後の経過と現在の状態

術後の全身状態は非常に良好で、翌日から食欲も回復しました。
低カルシウム血症や神経症状などの合併症も認められず、順調な経過をたどりました。
術後4日目には退院となり、その後の血液検査ではT4の値が正常化しました。
現在は手術から2年以上が経過していますが、再発は認められておらず、内服薬や食事療法も不要な状態です。
体重は3.8kgまで回復し、安定した生活を送っています。

まとめ

猫の甲状腺機能亢進症は多くが良性病変とされていますが、甲状腺癌が原因となっているケースも存在します。
甲状腺機能亢進症の治療では内科管理を選択する場合もあります。
ただし、生涯にわたる投薬が必要となる点や、悪性腫瘍の可能性を考慮すると、外科的な根治治療が有効なケースも多いです。
今回の症例では、外科手術によって甲状腺癌を根治することができ、その後2年以上にわたり再発なく、薬に頼らない生活を送ることができました。
当院では、甲状腺疾患や腫瘍に対する外科治療にも対応しております。
体重減少や行動の変化など気になる症状がある場合には、早めにご相談ください。

愛知県名古屋市西区
庄内通どうぶつ病院

   

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