コラム
2026年1月29日
猫のひも状異物について|実際の症例をまじえて紹介
猫のひも状異物について|実際の症例をまじえて紹介

猫が誤って異物を飲み込んでしまう事故は、日常診療でもよくみられます。
とくに若い猫では、ひもや糸、リボンなどをおもちゃ代わりにして遊び、そのまま飲み込んでしまうケースも少なくありません。
急に食欲がなくなったり何度も吐いているといった症状が見られる場合、消化管内に異物が詰まっている可能性があります。
今回は、実際に当院で治療を行った猫のひも状異物によって腸に穴があいてしまった症例をもとに、病気の概要と治療の流れについてご紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、異物誤飲の危険性について知っていただければと思います。
猫のひも状異物とは?
ひも状異物とは
- 糸
- ひも
- リボン
- ビニールひも
など、細長い形をした異物を指します。
猫は本能的にひも状のものに興味を示しやすく、遊んでいるうちに誤って飲み込んでしまうことがあります。
ひも状異物の特徴は、胃や舌に一部が引っかかったまま、先端だけが腸の奥まで進んでしまうことがある点です。
この状態になると、腸がひもに引き寄せられて縮み、腸の壁が強く傷ついてしまいます。
その結果、腸閉塞だけでなく、腸に穴があく「腸穿孔」や腹膜炎といった重篤な状態を引き起こすことがあります。
猫のひも状異物の症状
猫のひも状異物では、次のような症状がみられることがあります。
- 食欲不振
- 頻回の嘔吐
- 元気消失
- お腹を触ると嫌がる
- よだれが増える
初期の段階では軽い胃腸炎のような症状と区別がつきにくいこともあります。
ひも状異物は放置すると急激に状態が悪化することがあるため、早めの対処が必要です。
猫のひも状異物の治療方法
ひも状異物が疑われる場合、基本的な治療は外科手術による摘出となります。
ひも状異物は内視鏡や自然排出が難しいケースが多く、早期に手術を行うことが命を守るために非常に重要です。
ひも状異物は、見た目には軽い誤飲のように思われがちですが、実際には消化管を強く傷つけ、短時間で重篤な状態に陥ることの多い非常に危険な異物です。
とくに舌や胃に一部が引っかかったまま腸の奥まで引き込まれてしまうと、腸が強く引き寄せられ、穿孔や腹膜炎を引き起こすリスクが高くなります。
そのため、ひもや糸を飲み込んだ可能性がある場合には、無理に引っ張り出そうとせず、できるだけ早く動物病院を受診することが重要です。
早期に適切な対応を行うことで、重い合併症を防ぎ、回復につなげることができます。
実際の症例紹介
今回ご紹介するのは、1歳の去勢済みオスのアメリカンショートヘアの症例です。
食欲不振と頻回の嘔吐を主訴に来院されました。
診察時には元気がなく、何度も吐いてしまう状態が続いていました。
当院で腹部超音波検査を実施したところ、消化管内にひも状の異物が疑われる所見が確認されました。
以下が実際の腹部超音波検査の画像です。

症状と検査結果から、ひも状異物による腸閉塞の可能性が高いと判断しました。
治療と手術の経過
今回の症例は緊急性が高いと判断し、飼い主様とご相談の上で当日すぐに外科手術を行いました。
実際に開腹して確認したところ、胃にひも状異物の一部が固定された状態となり、そこから腸の奥まで異物が続いている状態でした。
まず胃切開を行って異物を除去しました。
さらに今回の症例では十二指腸の腸間膜側に穿孔が認められました。
傷んだ腸の一部を切除し、腸同士をつなぎ直す処置を実施。
実際の術中写真がこちらです。




十二指腸は消化液が多く流れる部位であり、穿孔や縫合不全を起こすと重篤な腹膜炎や膵炎を引き起こす危険性があります。
そのため、今回のような症例では、術後管理が非常に重要です。
本症例では、ドレーン管理と慎重な給餌再開を行うことで、大きな合併症を起こすことなく順調に回復することができました。
術後6日目には状態が安定したため、無事に退院となりました。
まとめ
猫のひも状異物は、猫でよくみられる誤飲のひとつです。
腸穿孔や腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こしやすい非常に危険な異物です。
今回の症例では、腸に穴があいてしまう重い状態でしたが、早期に手術を行い、腸の切除と吻合によって無事に回復することができました。
当院では、異物誤飲などの緊急外科手術にも対応しております。
食欲不振や嘔吐が続く場合には、早めにご相談ください。
愛知県名古屋市西区
庄内通どうぶつ病院

